最高裁判所第二小法廷 昭和25年(あ)1992号 判決 1952年7月25日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人堀込俊夫の上告趣意は、判例違反を主張するけれども所論本件脅迫行為の内容は「お前を恨んで居る者は俺丈けじゃない。何人居るか判らない。駐在所にダイナマイトを仕掛けて爆発させ貴男を殺すと云うて居る者もある」「俺の仲間は沢山居ってそいつ等も君をやっつけるのだと相当意気込んで居る」というのであるから、所論のように単に第三者に害悪を加えられるであらうことの警告、もしくは単純ないやがらせということはできない。むしろ被告人自ら加うべき害悪の告知、もしくは第三者の行為に因る害悪の告知にあたり被告人がその第三者の決意に対して影響を与え得る地位に在ることを相手方に知らしめた場合というべく、所論の判例は本件に適切でないか、もしくは原判決判示は所論判例の趣旨に添うものといわねばならない。それ故論旨は理由がない。また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)